生活習慣病とは
遺伝的な要因に偏食・過食や運動不足など長年の生活習慣の乱れが大きく関与して発症する慢性疾患の総称です。代表的な生活習慣病には、高血圧、脂質異常症(高脂血症)、糖尿病、高尿酸血症(痛風)、メタボリックシンドロームなどがあります。自覚症状に乏しいまま悪化して動脈硬化を進行させ、心筋梗塞や脳卒中、腎不全などにつながる可能性が高いことから、早期に適切な治療を受け、しっかりコントロールすることが重要視されています。
軽度であれば生活習慣やライフスタイルを改善することで良い状態を長く保つことができます。ある程度進行している場合は生活習慣の改善に加えて薬物療法を行っていきます。
生活習慣やライフスタイルの改善は、長く続けることが重要です。できるだけストレスなく行うことができ、より効果の高い方法をご提案するために、普段の食事、運動、喫煙や飲酒、睡眠、ストレス管理などについて丁寧にヒアリングしています。気になることはなんでもお気軽にご質問ください。
脂質異常症(高脂血症)
血液中にはコレステロールや中性脂肪といった脂質が含まれています。脂質が過剰な高脂血症では、血管内壁に脂質が付着してプラークとなり、動脈の狭窄や動脈硬化を進行させます。また血液中の余分な脂質を回収する役割を持ったHDL(善玉)コレステロールが少なすぎても同様の問題が生じることから、それも含めて脂質異常症と呼ばれています。脂質異常症は自覚症状なく進行しますので、ある日突然、心筋梗塞や脳卒中などの深刻な発作を起こしてはじめてわかる場合もあります。健康診断などで脂質異常を指摘されたら症状がなくても放置せず、早めに受診して適切な治療を受けましょう。
脂質異常症のタイプ
LDL(悪玉)コレステロール血症、HDL(善玉)コレステロール血症、トリグリセライド(中性脂肪)血症に分けられます。LDL(悪玉)コレステロールとトリグリセライド(中性脂肪)は過剰が、HDL(善玉)コレステロールは不足が問題になります。血中の脂質は、血液検査で調べることができます。
脂質異常の基準値
高LDL(悪玉)コレステロール血症 ≧140mg/dl(120~139 mg/dlは境界域)
高トリグリセライド(中性脂肪)血症 ≧150 mg/dl
低HDL(善玉)コレステロール血症 <40 mg/dl
脂質異常症の治療
食事や運動といった生活習慣の改善を行い、それで十分ではない場合には薬物療法もあわせて行います。血中の脂質は食事によって大きく左右されるため、食事療法は特に重要です。脂質異常症のタイプや合併症などによって注意が必要なポイントが変わってきますので、医師と相談してご自分に合った改善方法を探しましょう。食事以外では、適度な運動の習慣化、禁煙なども不可欠です。
高LDLコレステロール血症
悪玉コレステロールが多いため、肉や卵などの動物性脂肪の摂取を減らし、食物繊維が多い野菜・キノコ・海藻を積極的にとってください。糖尿病を合併している場合や肥満の場合には糖質の多い果物を食べ過ぎないようにしてください。EPAやDHAなどの不飽和脂肪酸を多く含む青魚もおすすめできます。
高トリグリセライド血症
中性脂肪が多いタイプです。食べ過ぎや糖質の過剰摂取、飲酒に注意する必要があり、カロリーコントロールや禁酒・節酒が必要になります。
低HDLコレステロール血症
余分な脂質を回収する善玉コレステロールが少ないタイプです。マーガリンやショートニングといったトランス脂肪酸をできるだけとらないようにしてください。また、リノール酸やアラキドン酸の摂取も抑える必要がありますので、植物油もできるだけ控えめにとるよう心がけましょう。
脂質異常症の治療薬
タイプに合わせた治療薬を処方しています。また、状態やライフスタイルなどに合わせたきめ細かい処方を行っています。脂質異常症の治療薬では筋肉痛や肝障害の副作用が現れる可能性があります。慎重に処方して経過を観察しますので、服薬していて異常を感じたら服薬を中止してすぐにご連絡ください。
高尿酸血症(痛風)
血液に含まれる尿酸の濃度が高い状態が続く疾患が高尿酸血症です。高尿酸状態が続くと尿路結石や腎機能障害発症のリスクが高くなります。また、過剰な尿酸が鋭い針状の結晶になって関節にたまり、足指などに激しい痛みを起こす痛風発作を起こすことがあります。ただし、尿酸値が高くても痛風発作を起こさないことも珍しくないので、痛風発作を起こしたことがなくても尿酸値が高い場合には適切な治療が必要です。
痛風発作
血液中の過剰な尿酸が結晶化して関節にたまって炎症を起こしている状態が痛風発作です。足の親指に起こることが多く、激しい痛みを生じます。風が吹いても痛いと言われるほど強い痛みが起こって歩行もままならなくなりますが、徐々に痛みが弱くなってほとんどの場合は10日前後で回復します。
尿酸値が高いと痛風発作を起こしやすい傾向がありますが、尿酸値が高くても痛風発作を起こさないケースもあります。また、痛風発作は尿酸値の急激な変化や激しい運動によって生じることもあります。痛風発作を起こしている間は血液検査をしても正しい尿酸値を測ることができず、尿酸値を下げる治療はかえって症状を悪化させてしまう可能性があります。そこで、痛風発作が起こっている間は痛みや炎症を抑える治療を行って、状態が落ち着いてから高尿酸血症の検査と治療を行います。
尿酸値とプリン体
プリン体はあらゆる生物の生命維持活動に不可欠な核酸の主成分です。プリン体は肝臓で代謝されて尿酸になり、老廃物として尿や便で排出されます。高尿酸血症は、プリン体の代謝が過剰になって血液中の尿酸が増えてしまう疾患です。内臓脂肪の増加によって脂肪細胞からの遊離脂肪酸分泌が過剰になると、肝臓でのプリン体代謝も増えることから、肥満、過食や偏食、運動不足は高尿酸血症のリスク要因です。
高尿酸血症の治療
痛風発作を起こしている間は尿酸値を下げる治療を行うと悪化する可能性がありますので、痛みや炎症を緩和させる治療を行います。状態が落ち着いたら血液検査で尿酸値を測り、高尿酸血症の治療を開始します。
尿酸の排出に問題がある尿酸排出低下型と、尿酸が作られ過ぎる尿酸産生過剰型、両方が混在しているタイプがありますので、それに合わせた治療を行います。尿酸値は急激に低下すると痛風発作を起こすことがありますので、慎重にコントロールしながら少しずつ下げていきます。尿酸値が十分に下がっても、結晶化した尿酸が溶けきるまでは時間がかかりますので、定期的に受診して検査を受けしっかり治すことが重要です。
痛風発作を起こしたことがない場合でも、血清尿酸値が9.0mg/dl以上では治療が必要になります。また、合併症として心疾患・高血圧・脂質異常症(高脂血症)・糖尿病・メタボリックシンドローム・肥満などがある場合には、血清尿酸値が8.0mg/dl以上で治療が必要になります。
治療は、薬物療法と運動療法・食事療法を行っていきます。なお、高尿酸血症は酸性尿(尿pH6.0未満)を合併しやすい傾向があります。その場合には、尿路結石や腎機能障害を起こしやすいため尿をアルカリ化する薬の処方がされることもあります。
生活習慣の改善
肥満がある場合にはカロリーコントロールを行い、適正体重を保ちます。栄養バランスのとれた食事を心がけ、プリン体が多く含まれる食品の摂取を控えましょう。アルカリ性食品を摂取すると尿酸結晶が溶けやすくなります。
十分に水分を摂取して尿酸の排出を促してください。ただし、心疾患や腎疾患がある場合には可能な水分摂取量に上限がありますので、医師の指示に従ってください。
軽い有酸素運動の習慣化は肥満解消や適正体重の維持にも役立ちます。無酸素運動など激しい運動は尿酸値を上昇させて痛風発作の誘因になるため、運動内容を医師と相談してから適切な運動を行いましょう。
食品のプリン体
レバーなどの内臓、魚卵・白子、エビ、イワシ、カツオ、ニシン、干し椎茸などはプリン体が多く含まれるため、食べ過ぎないようにしてください。ビールはプリン体が多いことが知られていますが、他のアルコールも尿酸値を上昇させますので、適量にとどめてください。
メタボリックシンドローム
生活習慣病の中でも、高血圧、糖尿病、脂質異常症は自覚症状に乏しいまま動脈硬化を進行させて、ある日突然、脳卒中や心筋梗塞などの深刻な発作を起こし命に関わる可能性のある病気です。内臓脂肪型肥満があって、高血圧、糖尿病、脂質異常症のうち2つ以上がある場合、それぞれの状態が軽度でも動脈硬化進行のリスクが大きく跳ね上がることがわかっています。
メタボリックシンドロームは、内臓脂肪型肥満があって、血圧・血糖・血中脂質の2つ以上が基準値を超えていることを指し、突然の脳卒中や心筋梗塞などのリスクが高い状態です。メタボリックシンドロームを指摘されたら、できるだけ早く治療を受け、適切な血圧・血糖・血中脂質を維持できるようしっかりコントロールする必要があります。なお、内臓脂肪型肥満は、お腹がぽっこり出るタイプの肥満です。
メタボリックシンドロームの診断基準
メタボリックシンドロームは、内臓型肥満があることが必須条件になっています。内臓脂肪型肥満は、ウエスト周囲径を計測して判断します。立位で、呼吸時に計測します。測るのはおへその位置です。
ウエスト周囲径の基準を超えている場合、血圧・血糖・血中脂質の数値が2項目以上基準値を超えているかを確認し、その上で診断されます。
ウエスト周囲径
男性 ≧85cm
女性 ≧90cm
血圧・血糖・血中脂質の数値(2項目以上で該当)
血圧
収縮期(最大)血圧 ≧130mmHg
拡張期(最小)血圧 ≧85mmHg
血中脂質
高トリグリセライド血症 ≧150mg/dl
低HDLコレステロール血症 <40mg/dl
血糖
空腹時高血糖 ≧110mg/dl
文責:新家 卓郎 院長 【消化器内視鏡専門医・消化器病専門医・肝臓専門医、肝臓暫定指導医・総合内科専門医】