過敏性腸症候群

過敏性腸症候群とは

過敏性腸症候群とは腹痛と下痢や便秘、膨満感などの症状が慢性的に続きますが、炎症などの器質的な病変がなく、蠕動運動などの機能の異常や知覚過敏などによって症状を起こしてると考えられている疾患です。慢性的な下痢や便秘で受診されて診断されるケースが多いのですが、不安や緊張、環境の変化といったストレスをきっかけに症状を起こしやすいことから体質とあきらめてしまっている方も少なくありません。適切な治療で改善が可能ですので、お悩みになっている場合には消化器内科の受診をおすすめします。

過敏性腸症候群のタイプ

過敏性腸症候群は現れる症状によって、便秘型、下痢型、混合型、分類不能型二分けられます。

便秘型

便が硬く、強くいきんでも小さくて丸い便が少量しか出ずに、残便感や強い腹痛をともないます。環境の変化などのストレスで便秘が悪化しやすい傾向があります。

下痢型

突然、強い腹痛が起こってトイレに駆け込むと、水のような激しい下痢になり、排便後には症状が一時的に改善します。腹痛から下痢といった症状を1日に何度も繰り返すこともあります。緊張や不安などをきっかけに症状を起こして通勤や通学が困難になることもあり、生活に大きな支障を及ぼす可能性がありますので、こうした症状が続く場合には早めにご相談ください。

混合型

便秘と下痢を繰り返すタイプです。数日便秘が続き、下痢になるといったサイクルを繰り返すことが多くなっています。また、混合型から下痢型や便秘型になるというケースも存在します。

分類不能型

便の状態に大きな問題はなく、膨満感、腹鳴、おならなど、ガスに関係した症状が起こるタイプなどを含みます。

過敏性腸症候群になりやすい人

年齢

男性は働き盛りの30~40代で下痢型を発症しやすい傾向があり、女性は20代と50代の便秘型が多いとされています。最近になって10代の発症が増加しており、タイプに関わらず幅広い年齢の発症がみられます。

体質・ストレス・生活習慣

消化管をコントロールしている自律神経はストレスの影響を大きく受けます。ストレスによる影響を受けやすい場合、過敏性腸症候群を発症しやすいとされています。遺伝的な要因や生活習慣などの関与も指摘されています。

性格

排便の頻度や内容は個人差が大きく、快適に排便してすっきりできれば毎日排便がなくても問題はありません。毎日朝に排便しなければと考えてしまうことで本来のリズムが崩れ、それがストレスになって悪循環を起こし、症状が悪化する場合があります。真面目できちんとしたいという思いが強いと、こだわってしまいやすい傾向があります。

過敏性腸症候群の検査・診断

逆流性食道炎 過敏症症候群の症状は、他の多くの大腸疾患と共通しており、大腸がんや難病指定されている潰瘍性大腸炎やクローン病でも同様の症状を起こすことがあります。大腸がん・潰瘍性大腸炎・クローン病は、早急に適切な治療を受けないと深刻な状態になってしまう可能性が高い病気ですから、まずはそうした疾患ではないかをしっかり確かめることが重要です。
大腸内視鏡検査では、大腸粘膜全域を詳細に確認することができます。各疾患には特有の病変があるためそれを確認し、炎症などの状態や範囲、分布を確かめ、組織を採取して病理検査を行うことで幅広い疾患の確定診断が可能です。
過敏性腸症候群は、大腸内視鏡検査で器質的な問題がないことが確認できて、はじめて疑われる疾患です。検査では確定診断はできないため、問診で丁寧に症状をうかがい、世界的な診断基準になっているRome基準を用いて診断します。

RomeⅣ(R4)

  • 腹痛などの症状が排便により軽快する
  • 症状の有無によって排便頻度に変化がある
  • 症状の有無によって便の状態に変化がある

上記のような症状が6か月以上前からあって、腹痛や腹部不快感が最近3か月の中の1か月につき、少なくとも3日以上を占め、上記2項目以上を満たしている場合に過敏性腸症候群と診断されます。

診断は問診だけでなく、血液検査・尿検査・便検査・大腸内視鏡検査を行い、器質的な問題がないことを確認することが推奨されています。
ただし、当院では、症状がはじまったのが6か月以内の場合などにも総合的に判断して、暫定的に過敏性腸症候群とみなした治療を行うことがあります。つらい症状がある場合、有効な治療はできるだけ早く開始する方が症状改善に結び付きやすいため、患者さん目線でこうした治療を行っています。上記の基準に当てはまらない場合もあきらめてしまわず、ご相談ください。

過敏性腸症候群の治療と予防

過敏性腸症候群は、症状や消化器の状態を改善する薬物療法を行い、
悪化に結び付きやすい生活習慣の見直しを行って状態の改善や再発防止にも役立てます。

薬物療法

下痢型、便秘型などのタイプ、症状、お悩みの内容、ライフスタイルや年齢、体質などに合わせた処方を行います。蠕動運動などの消化管機能を整える薬、便の水分量を調整する薬などを主に処方しています。ストレスの関与が強い場合には短期間の抗不安薬や抗うつ薬などの処方で高い効果を得られるケースもあります。下痢や便秘の治療薬だけでもさまざまな作用機序を持ったものがあり、新しい効果を持った薬も登場していますので、市販薬では十分な効果を得られない場合にも効果が期待できます。また、当院では漢方薬の併用なども可能です。服用できるタイミングなども考慮した処方を行っていますので、ご希望がありましたら遠慮なくお伝えください。

生活習慣の改善

休息や睡眠を十分にとることが基本です。体内時計をリセットすると生活リズムが整いやすくなりますので、できれば朝早起きして朝日を浴びるようにしてください。便意があったらすぐにトイレに行くといった正しい排便習慣をつけることも重要です。「しなければ」と思うと逆にストレスがたまってしまうため、気負わずにできる範囲で行うようにしてください。

食習慣の改善

食生活栄養バランスがとれた食事を1日3回、規則正しくとるよう心がけてください。暴飲暴食を避ける、刺激の強い香辛料やカフェインなどを控えるといった程度の制限は有効ですが、食事を楽しめる範囲にすることが重要です。

ストレス解消

ストレス解消気温の変化などストレスは無数にあり、全てをなくすことはできません。ストレスを減らすよりも、上手に解消することを優先し、趣味やスポーツなどを楽しむ時間を積極的に作るようにしてくだい。


文責:新家 卓郎 院長 【消化器内視鏡専門医・消化器病専門医・肝臓専門医、肝臓暫定指導医・総合内科専門医】

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